薔薇と兎中編4
2009-07-03(Fri)
兎が想うは薔薇の棘の行方。
だらだらいきます。
―ぽつり―
ピックの耳に冷たいしずくが落ちた。
思わず空を見上げると、そこにあるべき青い空はいつの間にか混沌とした黒い雲でいっぱいになっていた。
ついさっきまでは晴天だったのに・・・。
「一雨降りそうだなぁ」
プロンテラ大聖堂入り口、右側に生えている木の近くで身を隠していたピックはそっと大聖堂を見上げる。
ファイスが走っていって一体どれぐらいの時間が経過しているんだろう。
担がれる形で連れて行かれたローズが一番気になる。
無茶はしていないだろうか。
芯が強い分、倒れるまで全力で走るような娘だ。
何かしら、ボロボロの状態で帰ってくるに違いない。
「・・・」
ピックはそっと木から離れると、大聖堂の裏側へと向かった。
足音を出さないように、気配を消して。
「大抵こういう大きな施設の裏には必ずあるんだよね」
そう言いながらたどり着いたのは裏庭のようなところ。
花壇にはさまざまなハーブが生えていた。
「ふふっ、ビンゴ」
ファイスが修理してくれてすっかり新品のような輝きを取り戻したスティレットを取り出すとハーブの前にしゃがみこむ。
そして、丁寧に葉を1枚ずつ削ぎ取っていく。
「ばれない程度に盗らなきゃ・・・ね」
赤、黄、白・・・珍しい、青色のハーブもある。
魔法を使う時、人は精神・・・心の部分が疲労すると聞く。
青色のハーブは精神疲労の回復に良いと聞いたことがある。
アコライトやプリーストがたくさん居る大聖堂だからこそ、こんなにも青色のハーブが生えているんだろう。
「ヒユリちゃんやチャンア君にあげよう」
夢中で刈っていると、一つの気配に気がついた。
頭から生えたウサギの耳をピクピク動かしながら、ピックはコチラへ向かっている人影を警戒する。
「・・・」
がさっと音がすると、裏庭の入り口付近にバードの少年が立っていた。
「・・・誰か居るんでしょ・・・」
ハイディング―ローグ独特の地中に身を隠すスキル―をすかさず使ったピックは現れた少年の声をじっと聞いている。
深い金色の髪に水色の瞳。
頭には熊の顔をかたどった帽子をかぶり、マンドリンを担いでいる。
・・・あの少年、どこかで見たことが・・・。
そんなことを考えていたピックの近くに、その少年が近づいてくる。
少年は、じっと花壇のハーブを見つめて動かない。
「・・・盗人かな」
―気づかれたか・・・!?―
少年は深く深呼吸をすると、大声で叫んだ。
「集中力向上!!」
それまで綺麗な水色だった少年の瞳は、血のように真っ赤になった。
「!!!!」
思わずひるんでしまったピックが隠れている地面に向かって少年がスクロールを広げ読み始める。
「見つけた!」
しまった!
明らかに少年の詠唱速度のほうが速かった。
「降り注げ!ファイアーボルト!」
ピックの体に真っ赤な炎の矢が降り注いだ。
避けられない。
「っぁああ!」
黒い雲が雨を降らせ始めた。
「・・・!」
大聖堂の入り口まで走ってきたロズィが急に立ち止まると、後をぴったりくっついて走っていたファイスは少女とぶつかりそうになった。
「あぶな!」
思わず尻餅をつきかけたが、何とか体制を保った。
「なんや、急に」
後ろからぜぇはぁ言いながらヒユリたちも走ってくる。
・・・蒼亜は余裕のようだ。
彼女の手を引っ張り、一直線に走ってきた様子だった。
その為、さほど足が遅いというわけでもないのに、キーリァがまだ向こうのほうに見える。
立ち止まったロズィは辺りを見渡しながら不安な表情を浮かべた。
「・・・ピックの悲鳴が聞こえた気がした・・・」
いくら探しても、ウサギの姿がない。
「ピック・・・!ピック姉さん!
戻ってきたよ!」
雨がしとしとと降る音だけがむなしく響く。
「悲鳴って・・・どの方向から聞こえてきたんだ?」
ロズィは振り返ると、大聖堂を指差した。
「ちょうどこの裏ぐらい・・・です」
「そ・・・、そこな・・・ら・・・」
息切れがまだ続いているヒユリに変わって、やっと追いついたキーリァが汗を袖で拭いながら話した。
「・・・大聖堂の裏には小さな庭があって・・・。
そこで・・・ハーブを栽培してるんだ、教育用に・・・」
ロズィは大聖堂入り口の隣からずっと続いている芝生の中を走り出した。
ぐるっと回れば、きっと裏庭だ。
一向は本当は立っているのもやっとなロズィの走っていく姿を追う。
「ピック姉さん!?」
裏庭に着いたロズィは思わず目を疑った。
後から着いたヒユリたちも、それは一緒に違いない。
大柄のホワイトスミスの男が、血まみれのピックの襟元を片手でつかみ、宙吊りにしていたのだから。
ピックは意識がない様子で、ぐったりとしている。
・・・ヒユリは滴る血の量が多い気がした。
「お前!!!!」
ロズィがカタールを背中から素早く両腕で装備すると、男に向かって走る。
「!待て!」
蒼亜がロズィのスカーフを強引に引っ張り、引き戻した。
その反動で二人とも後ろのほうへ倒れてしまったが。
「っ・・・なにす・・・」
ロズィの言葉が終わらない内に、足元に一本の矢が刺さった。
・・・金色に輝く"無形の矢"がまがまがしいオーラをかもし出していた。
「あーあ・・・気づかれてたのか」
そういうと、木の陰からバードの少年が姿を現した。
「!
・・・あ、あなたは」
ヒユリが思わず尋ねると、向こうも気づいたようだ。
ニッコリ微笑んでコチラを見ている。
「やあ、さっきゲフェンの街で見かけた・・・ヒユリさんじゃない」
「あ・・・あなたは確か・・・」
「ミカだよ、ヒユリさん。
ミカ・モルホノル」
そういうと、ゆっくりホワイトスミスの男に近寄り、ピックを見つめた。
「バカな女だね、本当。
さっさと組織に殺されてしまえばよかったものを。
しぶとく生き延びるから、またこうやって痛い目に遭うんだよ」
「!」
男と少年ミカがピックを"持った"まま、その場を離れようとするのを見たロズィが大声を出す。
「待て!
お前たち!その人をどうする気だ!」
立ち止まると、ミカだけがゆっくり振り返った。
じっとロズィを見つめると、おぞましいほどの不適な笑みで微笑んだ。
「そういうお前はロズィじゃないか。
早くアジトへおいで。
愛しのピック=パックはそこで君の先輩と待ってるよ」
そういうと、二人は蝶の羽を掲げ、呪文を唱えた。
「蝶の羽!その翼であの場所まで飛べ!」
悲鳴のような音とともに、そこに居たはずの3人は跡形もなく消えていた。
だらだらいきます。
―ぽつり―
ピックの耳に冷たいしずくが落ちた。
思わず空を見上げると、そこにあるべき青い空はいつの間にか混沌とした黒い雲でいっぱいになっていた。
ついさっきまでは晴天だったのに・・・。
「一雨降りそうだなぁ」
プロンテラ大聖堂入り口、右側に生えている木の近くで身を隠していたピックはそっと大聖堂を見上げる。
ファイスが走っていって一体どれぐらいの時間が経過しているんだろう。
担がれる形で連れて行かれたローズが一番気になる。
無茶はしていないだろうか。
芯が強い分、倒れるまで全力で走るような娘だ。
何かしら、ボロボロの状態で帰ってくるに違いない。
「・・・」
ピックはそっと木から離れると、大聖堂の裏側へと向かった。
足音を出さないように、気配を消して。
「大抵こういう大きな施設の裏には必ずあるんだよね」
そう言いながらたどり着いたのは裏庭のようなところ。
花壇にはさまざまなハーブが生えていた。
「ふふっ、ビンゴ」
ファイスが修理してくれてすっかり新品のような輝きを取り戻したスティレットを取り出すとハーブの前にしゃがみこむ。
そして、丁寧に葉を1枚ずつ削ぎ取っていく。
「ばれない程度に盗らなきゃ・・・ね」
赤、黄、白・・・珍しい、青色のハーブもある。
魔法を使う時、人は精神・・・心の部分が疲労すると聞く。
青色のハーブは精神疲労の回復に良いと聞いたことがある。
アコライトやプリーストがたくさん居る大聖堂だからこそ、こんなにも青色のハーブが生えているんだろう。
「ヒユリちゃんやチャンア君にあげよう」
夢中で刈っていると、一つの気配に気がついた。
頭から生えたウサギの耳をピクピク動かしながら、ピックはコチラへ向かっている人影を警戒する。
「・・・」
がさっと音がすると、裏庭の入り口付近にバードの少年が立っていた。
「・・・誰か居るんでしょ・・・」
ハイディング―ローグ独特の地中に身を隠すスキル―をすかさず使ったピックは現れた少年の声をじっと聞いている。
深い金色の髪に水色の瞳。
頭には熊の顔をかたどった帽子をかぶり、マンドリンを担いでいる。
・・・あの少年、どこかで見たことが・・・。
そんなことを考えていたピックの近くに、その少年が近づいてくる。
少年は、じっと花壇のハーブを見つめて動かない。
「・・・盗人かな」
―気づかれたか・・・!?―
少年は深く深呼吸をすると、大声で叫んだ。
「集中力向上!!」
それまで綺麗な水色だった少年の瞳は、血のように真っ赤になった。
「!!!!」
思わずひるんでしまったピックが隠れている地面に向かって少年がスクロールを広げ読み始める。
「見つけた!」
しまった!
明らかに少年の詠唱速度のほうが速かった。
「降り注げ!ファイアーボルト!」
ピックの体に真っ赤な炎の矢が降り注いだ。
避けられない。
「っぁああ!」
黒い雲が雨を降らせ始めた。
「・・・!」
大聖堂の入り口まで走ってきたロズィが急に立ち止まると、後をぴったりくっついて走っていたファイスは少女とぶつかりそうになった。
「あぶな!」
思わず尻餅をつきかけたが、何とか体制を保った。
「なんや、急に」
後ろからぜぇはぁ言いながらヒユリたちも走ってくる。
・・・蒼亜は余裕のようだ。
彼女の手を引っ張り、一直線に走ってきた様子だった。
その為、さほど足が遅いというわけでもないのに、キーリァがまだ向こうのほうに見える。
立ち止まったロズィは辺りを見渡しながら不安な表情を浮かべた。
「・・・ピックの悲鳴が聞こえた気がした・・・」
いくら探しても、ウサギの姿がない。
「ピック・・・!ピック姉さん!
戻ってきたよ!」
雨がしとしとと降る音だけがむなしく響く。
「悲鳴って・・・どの方向から聞こえてきたんだ?」
ロズィは振り返ると、大聖堂を指差した。
「ちょうどこの裏ぐらい・・・です」
「そ・・・、そこな・・・ら・・・」
息切れがまだ続いているヒユリに変わって、やっと追いついたキーリァが汗を袖で拭いながら話した。
「・・・大聖堂の裏には小さな庭があって・・・。
そこで・・・ハーブを栽培してるんだ、教育用に・・・」
ロズィは大聖堂入り口の隣からずっと続いている芝生の中を走り出した。
ぐるっと回れば、きっと裏庭だ。
一向は本当は立っているのもやっとなロズィの走っていく姿を追う。
「ピック姉さん!?」
裏庭に着いたロズィは思わず目を疑った。
後から着いたヒユリたちも、それは一緒に違いない。
大柄のホワイトスミスの男が、血まみれのピックの襟元を片手でつかみ、宙吊りにしていたのだから。
ピックは意識がない様子で、ぐったりとしている。
・・・ヒユリは滴る血の量が多い気がした。
「お前!!!!」
ロズィがカタールを背中から素早く両腕で装備すると、男に向かって走る。
「!待て!」
蒼亜がロズィのスカーフを強引に引っ張り、引き戻した。
その反動で二人とも後ろのほうへ倒れてしまったが。
「っ・・・なにす・・・」
ロズィの言葉が終わらない内に、足元に一本の矢が刺さった。
・・・金色に輝く"無形の矢"がまがまがしいオーラをかもし出していた。
「あーあ・・・気づかれてたのか」
そういうと、木の陰からバードの少年が姿を現した。
「!
・・・あ、あなたは」
ヒユリが思わず尋ねると、向こうも気づいたようだ。
ニッコリ微笑んでコチラを見ている。
「やあ、さっきゲフェンの街で見かけた・・・ヒユリさんじゃない」
「あ・・・あなたは確か・・・」
「ミカだよ、ヒユリさん。
ミカ・モルホノル」
そういうと、ゆっくりホワイトスミスの男に近寄り、ピックを見つめた。
「バカな女だね、本当。
さっさと組織に殺されてしまえばよかったものを。
しぶとく生き延びるから、またこうやって痛い目に遭うんだよ」
「!」
男と少年ミカがピックを"持った"まま、その場を離れようとするのを見たロズィが大声を出す。
「待て!
お前たち!その人をどうする気だ!」
立ち止まると、ミカだけがゆっくり振り返った。
じっとロズィを見つめると、おぞましいほどの不適な笑みで微笑んだ。
「そういうお前はロズィじゃないか。
早くアジトへおいで。
愛しのピック=パックはそこで君の先輩と待ってるよ」
そういうと、二人は蝶の羽を掲げ、呪文を唱えた。
「蝶の羽!その翼であの場所まで飛べ!」
悲鳴のような音とともに、そこに居たはずの3人は跡形もなく消えていた。
テーマ : ラグナロクオンライン
ジャンル : オンラインゲーム
